保守主義の原則とは、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行うことを容認する原則です。
一般原則六、保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
保守主義の原則の必要性
今日の企業は絶えず厳しい競争にさらされながら事業活動を営んでいます。したがって企業の事業活動をより長く継続させるためには、将来の予期せぬ事態に備えて利益をやや控えめに計算し、企業体力を温存するような会計処理を許容することも必要になってきます。
そして、このような保守的な会計処理は企業会計の実務において慣行として一般的に行われています。
したがって、実務の中から公正妥当と認められる会計慣行を抽出して作成された企業会計原則においても、実務上の会計慣行である保守的な会計処理を認めることとしています。
ただし後述しますが、保守的な会計処理を採用することを認めてはいるものの、過度に保守的な会計処理は明確に禁止しているため区別が必要です。
保守的な会計処理とは
ちなみに保守的な会計処理とは、収益をできるだけ確実なものだけ計上し費用は細大もらさず計上することをいいます。利益をできるだけ控えめに計上することにより資金の社外流出を少なくする会計処理となります。
保守的な会計処理の選択を認めるという意味
なお企業会計原則で認めている保守的な会計処理とは、制度会計上認められている複数の会計処理のうち、いずれかより保守的な会計処理の選択を認めるという意味に過ぎません。売上を除外したり費用を過大に計上することを認めているわけではありません。
制度会計上の保守的な会計処理
企業会計原則で認められている保守的な会計処理の選択の代表的なものは次のとおりです。
- 期末棚卸資産の評価方法における低価基準の採用
- 減価償却における定率法の採用
- 割賦販売収益の認識における回収基準の採用
過度に保守的な会計処理の禁止
企業会計原則が認めている保守的な会計処理は前述のとおり会計処理を選択適用する際の一つの判断基準としての保守主義であり、利益を過小に表示するために利益を隠匿したり貸借対照表に表示されない秘密積立金を積み立てることなどを認めているものではありません。
企業会計原則は、注解4においてそういった行為を過度に保守的な会計処理として、企業会計の真実な報告を歪めるものとして明確に禁じています。