「財務諸表」という言葉は、決算書と同じような意味で何気なく使われていますが、その範囲を厳密に考えると意外とややこしいものです。この記事では、財務諸表の法令上の定義、決算書や計算書類との違い、よく使われる「財務三表」という言葉について整理します。
この記事のポイント
- 財務諸表とは、会社の財政状態や経営成績を示す書類の総称
- 貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書・株主資本等変動計算書などが含まれる
- 会社法では「計算書類」、金融商品取引法では「財務諸表」と呼ぶ
財務諸表の法令上の定義
財務諸表(読み方:ざいむしょひょう)は、日常的に使われる言葉であると同時に、法令上の用語でもあります。
金融商品取引法に基づく「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(財務諸表等規則。昭和38年制定の内閣府令)では、財務諸表について定めています。
財務諸表等規則での定め
財務諸表等規則の第1条では、財務諸表について次のように定めています(一部省略)。
金融商品取引法の規定により提出される財務計算に関する書類(以下「財務書類」という。)のうち、次の各号に掲げるものの用語、様式及び作成方法は、当該各号に定める規定の定めるところによるものとし、この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。
一 財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書並びに附属明細表(後略))
つまり、金融商品取引法上の「財務諸表」とは、次の4つの計算書に附属明細表を加えたものを指します。
「並びに」でつながる附属明細表
規則の文言では、4つの計算書と附属明細表は「並びに」でつながれています。文言どおりに読めば、財務諸表は4つの計算書と附属明細表を合わせた5つということになります。
ただし附属明細表は、有形固定資産や借入金などの明細を示して、貸借対照表などの内容を詳しく補足するための書類です。単独で意味を持つものではないため、当サイトでは主要な4つの計算書を中心に財務諸表として解説しています。実務でも、財務諸表といえば主にこの4つを思い浮かべる人が多いでしょう。
英語の「Financial Statements」
「財務諸表」という名前は、英語のFinancial Statementsを日本語に訳したものと考えられます。
財務諸表の範囲には複数の考え方がある
以上から、当サイトでは、財務諸表とは貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書の4つを中心とするもの、として紹介しています。
ただし、附属明細表や注記も財務諸表の範囲に含めるべきだという考え方もありますし、そもそもディスクロージャー制度によって作成・開示が求められる書類の範囲も異なります。財務諸表の範囲にはいくつかの考え方があると理解しておきましょう。
なお、財務諸表等規則の定義が直接適用されるのは、金融商品取引法に基づいて書類を作成する場面です。それ以外の場面では、必ずしもこの定義に従う必要はありません。
財務諸表と決算書の違い
一般には同じ意味で使われる
日本では、財務諸表と決算書は、ほぼ同じ意味の言葉として使われています。どちらも、会社が決算期ごとに作成する会計の報告書のことです。
厳密には根拠となる法律が違う
ただし厳密には、両者は少し異なるものだと考える人も多くいます。
会社法では、株式会社が作成する貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表を計算書類と呼びます。一般に「決算書」というときは、この会社法上の計算書類を指すことが多いです。一方、財務諸表は、金融商品取引法に基づいて有価証券報告書などで開示される書類を指します。キャッシュ・フロー計算書は、会社法の計算書類には含まれません。
「決算報告書」と「決算書」
会社法の計算書類を製本した書類には、「決算報告書」という表題が付けられていることがよくあります。決算書という言葉は、この決算報告書を短くしたものだと考えると分かりやすいでしょう。

財務諸表(決算書)の読み方
財務諸表の読み方については、別の記事にまとめています。
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財務分析で決算書を読む方法|目的別の指標
決算書を財務分析指標で読む方法を、短期的な支払能力・手元資金・長期的な安全性・収益性・運転資金と、知りたいこと別に紹介します。
「財務三表」とは
日本では、財務諸表のうち、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つを財務三表と呼ぶことがよくあります。
この呼び方は、次の書籍などをきっかけに広まったものです。法令上の用語ではありませんが、会計を学び始めた人に財務諸表の全体像を説明するには分かりやすく、広く使われています。
[wpap service="with" type="detail" id="4022736844" title="【増補改訂】 財務3表一体理解法 (朝日新書)"]
貸借対照表と損益計算書のつながり
財務三表の説明では、「貸借対照表と損益計算書は当期純利益を通じてつながっている」と紹介されることがあります。ただし、現在の制度では、正確には両者は株主資本等変動計算書を介してつながっています。
損益計算書の当期純利益は、まず株主資本等変動計算書の利益剰余金の増加として記載され、配当などによる減少とあわせて、期末の利益剰余金として貸借対照表に載ります。
会社法が施行された2006年(平成18年)5月より前は、損益計算書の最後に当期未処分利益が表示され、それが貸借対照表に直接つながっていました。現在は配当などの株主資本の変動を株主資本等変動計算書で示すため、損益計算書の当期純利益がそのまま貸借対照表に載るわけではない点に注意しましょう。
財務諸表に関するよくある質問
Q. 財務三表とは?
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つです。
Q. 決算書との違いは?
決算書は一般的な呼び方で、法律上は会社法の「計算書類」、金融商品取引法の「財務諸表」と呼ばれます。中身はほぼ同じです。
Q. 中小企業もキャッシュフロー計算書は必要ですか?
会社法上は作成義務はありません。ただし資金繰り管理や融資の場面で作成すると役立ちます。