垂直分析と水平分析は、財務分析で決算書の数字を比べるときの基本となる2つの方法です。この記事では、それぞれのやり方を計算例つきで解説し、2つを組み合わせて決算書を読むコツを紹介します。
この記事のポイント
- 垂直分析は、1期分の決算書の中で各項目の構成比(売上高や総資産に対する割合)を見る方法
- 水平分析は、複数期の同じ項目を並べて、増減額・増減率や推移を見る方法
- 垂直分析で「今の体質」、水平分析で「変化の方向」が分かる
- 2つを組み合わせると、利益が増えた・減った本当の理由が見えてくる
垂直分析と水平分析の違い
決算書を表にしたとき、縦(垂直)方向に項目どうしを比べるのが垂直分析、横(水平)方向に年度どうしを比べるのが水平分析です。
| 垂直分析 | 水平分析 | |
|---|---|---|
| 比べるもの | 同じ期の中の項目どうし | 同じ項目の複数の期どうし |
| 計算すること | 構成比(売上高や総資産を100%とした割合) | 増減額・増減率、基準年を100とした指数 |
| 分かること | 収益構造・財務構造(今の体質) | 成長や悪化のスピード(変化の方向) |
| 別の呼び方 | 構成比分析、百分率財務諸表 | 趨勢(すうせい)分析、トレンド分析 |
| 得意な比較 | 規模の違う会社どうし、業界平均との比較 | 同じ会社の過去との比較 |
垂直分析とは
垂直分析(Vertical Analysis)とは、ある期の決算書の中で、各項目が全体のどれくらいを占めているかを割合(構成比)で表して分析する方法です。損益計算書では売上高を100%、貸借対照表では総資産を100%として計算します。
金額ではなく割合で表すため、規模がまったく違う会社どうしでも比べられるのが大きなメリットです。
損益計算書の垂直分析(計算例)
各項目を売上高で割って、構成比を計算します。
| 項目 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,210 | 100.0% |
| 売上原価 | 847 | 70.0% |
| 売上総利益 | 363 | 30.0% |
| 販売費及び一般管理費 | 290 | 24.0% |
| 営業利益 | 73 | 6.0% |
構成比 = 各項目の金額 ÷ 売上高 × 100(%)
この例では、売上高のうち70%が原価、24%が販管費に使われ、本業のもうけ(営業利益)として残るのは6%だと分かります。この「6%」が売上高営業利益率です。
貸借対照表の垂直分析(計算例)
貸借対照表では、各項目を総資産(負債・純資産合計)で割ります。
| 項目 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 400 | 40.0% |
| 固定資産 | 600 | 60.0% |
| 流動負債 | 250 | 25.0% |
| 固定負債 | 300 | 30.0% |
| 純資産 | 450 | 45.0% |
| 総資産(合計) | 1,000 | 100.0% |
純資産の構成比45%は、そのまま自己資本比率です。固定資産が資産の60%を占めているので、設備などに多くのお金を使っている会社だと分かります。
貸借対照表の構成比を図にすると、財務の「形」がひと目で分かります。図の見方は決算書の構成の記事でも紹介しています。
水平分析とは
水平分析(Horizontal Analysis)とは、同じ会社の決算書を複数期分並べて、各項目がどれだけ増えたか・減ったかを分析する方法です。趨勢(すうせい)分析やトレンド分析とも呼ばれます。
水平分析では、主に次の2つを計算します。
- 増減額・増減率:前の期と比べてどれだけ増減したか
- 趨勢指数:基準となる年を100として、各年がいくつになったか
増減率の計算例
3期分の損益計算書で、前期からの増減率を計算します。
| 項目 | 1期目 | 2期目 | 3期目 | 増減率(2期目) | 増減率(3期目) |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,000 | 1,100 | 1,210 | +10.0% | +10.0% |
| 販管費 | 220 | 242 | 290 | +10.0% | +19.8% |
| 営業利益 | 80 | 88 | 73 | +10.0% | -17.0% |
増減率 =(当期の金額 - 前期の金額)÷ 前期の金額 × 100(%)
3期目は売上高が10%伸びているのに、営業利益は17%も減っています。販管費が売上高の伸び(10%)を大きく上回る19.8%も増えたことが原因だと分かります。
趨勢指数の計算例
1期目を100として、各年の数値を指数にすると、伸び方の違いが比べやすくなります。
| 項目 | 1期目 | 2期目 | 3期目 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 100 | 110 | 121 |
| 販管費 | 100 | 110 | 132 |
| 営業利益 | 100 | 110 | 91 |
趨勢指数 = 各年の金額 ÷ 基準年の金額 × 100
5年、10年と長く並べるほど、会社が成長しているのか、どこかで流れが変わったのかがはっきりします。
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財務分析とは?目的とやり方、主な分析手法
財務分析とは、決算書の数字を財務分析指標に当てはめて会社の安全性や収益性を評価することです。財務分析のメリット、決算書の入手方法、分析の単位と種類、垂直分析と水平分析を解説します。
垂直分析と水平分析を組み合わせる
2つの方法は、片方だけでは見えないことを補い合います。上の例を組み合わせてみましょう。
| 項目 | 1期目 | 3期目 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 販管費の構成比(販管費率) | 22.0% | 24.0% | +2.0ポイント |
| 営業利益の構成比(営業利益率) | 8.0% | 6.0% | -2.0ポイント |
水平分析で「3期目に販管費が急に増えた」ことが分かり、垂直分析で「その結果、売上高に占める販管費の割合が2ポイント上がり、営業利益率がちょうど2ポイント下がった」ことが確かめられます。
このように、水平分析で変化に気づき、垂直分析で体質への影響を確かめるのが基本の流れです。変化の理由(広告費を増やした、人を採用したなど)は、有価証券報告書の「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」で確認できます。
垂直分析と水平分析の注意点
- 会計方針の変更やM&Aに注意:会計基準の変更や、会社の買収・事業の売却があった年は、数字が大きく動いても実態の変化とは限りません。
- 金額の小さい項目の増減率は大きく見える:10が20になっても増減率は100%です。増減率だけでなく増減額も確認しましょう。
- 構成比の目安は業種で違う:小売業と製造業では、原価率や固定資産の割合がまったく違います。比べるときは同じ業種どうしで比べましょう。
Excelで垂直分析・水平分析をする
当サイトでは、垂直分析・水平分析をすぐに試せる無料のExcelテンプレートを配布しています。
ほかの会社と構成比を比べたい場合は、他社比較ツールも便利です。
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財務分析の内部分析と外部分析の違い
財務分析には、投資家や金融機関などが行う外部分析と、会社の内部で行う内部分析があります。それぞれの目的、使える情報、分析の単位の違いを解説します。
垂直分析と水平分析に関するよくある質問
Q. 垂直分析と水平分析はどちらを先にやるべき?
最初に水平分析で大きく変化した年や項目を見つけ、次に垂直分析で構成比がどう変わったかを確かめる順番がおすすめです。
Q. 百分率財務諸表とは何ですか?
損益計算書なら売上高、貸借対照表なら総資産を100%として、すべての項目を構成比で表した財務諸表のことです。垂直分析で使います。
Q. 水平分析は何期分あればいいですか?
最低でも3期分、できれば5期分以上あると傾向がつかみやすくなります。上場企業の有価証券報告書には「主要な経営指標等の推移」として5期分の数字が載っています。
Q. 他社と比べるときはどちらを使いますか?
規模の違う会社どうしを比べるときは、割合で表す垂直分析が向いています。金額のままでは大きい会社のほうが良く見えてしまうためです。