棚卸資産回転率(Inventory Turnover)の計算式や目安、在庫回転日数(DIO)への換算方法を世界基準(CFA/CFI)で解説。なぜ売上高ではなく売上原価(COGS)を使うのか、不良在庫の見極め方や業種別目安まで網羅。
この記事のポイント
- 棚卸資産回転率(回)= 売上原価(COGS) ÷ 平均棚卸資産。商品や製品がどれだけスピーディーに販売されたかを測る。
- 回転日数(DIO / DSI)= 365 ÷ 棚卸資産回転率。倉庫に在庫が何日間滞留しているかを表す。
- 【世界基準の鉄則】B/Sの在庫は「原価」計上されているため、分子も利益を含まない「売上原価」で揃えなければ致命的な歪みが生じる。
- 数値が低下(DIOが長期化)している場合は、売れ残りやデッドストックの増加、将来の在庫評価損リスクを警戒する。
棚卸資産回転率(Inventory Turnover)とは?基本概念
棚卸資産回転率(Inventory Turnover Ratio)とは、会社が仕入れた商品や原材料、製造した製品などの「在庫(棚卸資産)」が、「1年間に何回入れ替わった(売れて倉庫を出て行った)か」を測定する効率性指標です。
企業にとって在庫は「将来の売上の種」ですが、同時に「手元の現金が姿を変えて倉庫に固定された状態」でもあります。在庫がいつまでも売れ残れば、保管費用や保険料が無駄にかかり、最悪の場合は価値がゼロになって評価損を計上することになります。棚卸資産回転率は、企業のサプライチェーンの健康状態を測る最重要指標です。
計算式とDIO(在庫回転日数)の求め方
グローバルスタンダードな計算式は以下の通りです。
★ 棚卸資産回転率の計算式(CFA/CFI準拠):
棚卸資産回転率(回) = 売上原価(COGS) ÷ 平均棚卸資産
★ DIO(Days Inventory Outstanding:在庫回転日数):
DIO(日) = 365日 ÷ 棚卸資産回転率 = (平均棚卸資産 ÷ 売上原価) × 365日
例えば売上原価が80億円、平均棚卸資産が10億円の場合、回転率は「80 ÷ 10 = 8回」、DIOは「365 ÷ 8 = 約45.6日」となります。仕入れてから約46日で売れるペースです。
【CFA流の厳密ルール】なぜ売上高ではなく売上原価(COGS)を使うのか?
日本の初歩的なWebサイトでは「売上高 ÷ 棚卸資産」と解説されていることがありますが、欧米の証券アナリスト実務ではこれは完全に否定されます。
なぜ売上高を使うと間違った結論になるのか?
貸借対照表の在庫は「取得原価(Cost)」で記録されています。もし分子に利益マージンを含む「売上高」を使うと、「高級ブランドのように粗利が高いビジネスほど、在庫の物理的な回転速度が不当に速く計算されてしまう」のです。在庫が実際に倉庫を通過する物理的スピードを測定するには、分子も原価ベースである「売上原価(COGS)」を使わなければなりません。
棚卸資産回転率とDIOの業種別目安
業種ごとの製品寿命や調達期間によって、目安は大きく異なります。
- 食品スーパー・生鮮品:回転率 25回〜40回(DIO 9日〜15日・腐敗するため超高速回転)
- アパレル・ファストファッション:回転率 4回〜8回(DIO 45日〜90日・季節サイクル)
- 自動車・精密機械製造業:回転率 6回〜12回(DIO 30日〜60日・ジャストインタイム管理)
- 医薬品・重工業・造船:回転率 1回〜3回(DIO 120日〜300日・研究開発や製造工程が長期)
在庫回転率を改善する3つの実務アプローチ
在庫回転率を向上させるには、以下の3つの施策が有効です。
- SKU(商品点数)の削減と売れ筋への集中:長期間動いていない「死に筋在庫」をセールや廃棄で早期に一掃する。
- 需要予測精度の向上とJIT(ジャストインタイム):POSデータやAI需要予測を活用し、過剰な安全在庫を持たない体制を築く。
- サプライヤーとのリードタイム短縮:発注から納品までのリードタイムを短縮し、発注ロットを小さく小回りの利く調達へシフトする。