利益準備金とは

利益準備金とは

利益準備金（読み方：りえきじゅんびきん）とは、会社法の規定によって積み立てることが義務付けられている利益の積み立て（利益の内部留保）を指します。株式会社は稼いだ利益（剰余金）を配当金として株主に還元することができますが、その際、配当金額の10分の１を積み立てなければならないこととされています。それが利益準備金です。

利益準備金の積み立て限度

会社法が規定するその利益準備金の積み立て限度額は、資本準備金と合わせた法定準備金が、資本金の4分の1に達するまでとなります。

利益準備金の貸借対照表の表示

利益準備金は貸借対照表の純資産の部に表示されています。

利益準備金と利益剰余金の違い

「利益準備金」とよく似たものに「利益剰余金」があります。上の貸借対照表を例にとると、利益準備金と繰越利益剰余金とその他利益剰余金の合計が利益剰余金となります。

利益準備金と利益剰余金の違いとしては、利益準備金が会社法の規定により積立てが強制された利益の内部留保であるのに対して利益剰余金は、その利益準備金を包括した概念、利益剰余金には利益準備金以外の会社が任意に留保した利益の内部留保を含むという点で異なります。

その他の利益剰余金

ちなみにその他の利益剰余金とは、利益剰余金のうち利益準備金以外のもの、会社が任意に留保している利益をいいます。具体的には繰越利益剰余金とその他利益剰余金がそれに該当します。

利益準備金は利益剰余金として省略表示もOK

利益準備金と繰越利益剰余金とその他利益剰余金などの利益剰余金は会社が稼いだ利益のうち、配当金などとして処分せず社内に留保されているものという点において共通しています。ただし利益準備金については配当可能利益を構成しないという特徴があります。

そして連結貸借対照表では配当可能利益を表示する意味合いが薄いことから、まとめて利益剰余金として省略表示を行うことが可能です（連結財務諸表に関する会計基準）。

例えば、カシオ計算機株式会社の2024年3月期決算短信の貸借対照表（連結貸借対照表）の純資産の部は次のように表示されています。カシオは上場会社であることから基本的には配当を行っているはずであり、よって利益準備金を積み立てているはずですので決して利益準備金がないわけではなく、利益準備金などを利益剰余金としてまとめて表示しているということです。

省略せず詳細表示している場合にはこうなります。株式会社帝国ホテルの2024年3月期決算短信（個別貸借対照表）です。

利益準備金の積み立て

株式会社は稼いだ利益（剰余金）を配当金として株主に還元することができますが、会社法の規定により、法定準備金が資本金の4分の1に達するまで、配当金額の10分の１を利益準備金として積立てなければならないこととされています。

帝国ホテルの利益準備金

せっかくなので実際に確認してみようと思います。先ほどの株式会社帝国ホテルの2024年3月期決算短信（個別貸借対照表）を見てください。そして資本金1,485百万円を1/4すると371百万円となります。即ち、帝国ホテルは既に利益準備金の積み立て限度額に達していることを意味します。

帝国ホテルの株主資本等変動計算書

続いて株主資本等変動計算書も見てみましょう。

2024年3月期、帝国ホテルはその他利益剰余金の繰越利益剰余金を原資として237百万円を配当していますが、上で解説したとおり既に利益準備金の積み立て限度に達しているため利益準備金の積み立てを行っていません。

仮に利益準備金が0だった場合には、会社法の規定により配当した237百万円の1/10である23百万円を利益準備金として積立てなければならないこととなります。

利益準備金が資本金の1/4を超えることがある

会社法の規定により利益準備金として積立てを行うのは法定準備金が資本金の1/4に達するまでです。したがって、利益準備金が資本金の1/4を超えるとそれ以上の積み立ては必要なくなります。したがって利益準備金が資本金の1/4を超えることは基本的にありえません。

しかし、例えば資本金5億円の会社で利益準備金を1億円ほど積み立てていた会社があって、その会社がその後資本金1億円に減資したというようなケースではそれがありえます。