倒産危険会社の見分けるのは難しい
外部分析には限界がある
倒産危険会社を見分けるとはいっても100%完全に行うことはできません。企業活動にはさまざまなリスク要因があり、なかには為替変動や法規制といった会社の業績とは無関係のどうしようもない要因もあったりし、さらには、外部の人間からは到底知りえない情報もあったりとそもそも外部分析には限界があるためです。
しかしある程度は判別を行うことが可能
しかし、完全には見分けることができないとしてもある程度は判別を行うことが可能です。それは、倒産会社は倒産するべくして倒産しているからです。順調に業績をあげていた会社がある日突然倒産することはありません。なんらかの兆候が現れているはずです。そして、そのシグナルは決算書を読めばたいてい読み取ることができます。
なお、近年、高速に情報化社会が進展し、SNSの発達により、昔だったら到底一般人では知ることができなかった情報であったとしても、アンテナを張っていれば誰でも簡単に入手することができるようになりました。したがって、現在においてはむしろ、ある会社が倒産しそうだといった情報は事前に出回ってしまい場合が多いともいえるのかもしれません。
しかしながら、当記事では、財務分析指標を使ったテクニカルな倒産危険会社の見分け方をまとめてみることにしました。ちなみに本記事は元々は現在と比較してまだまだ情報化社会が進展していなかった2008年頃に執筆したものです。時代の変遷を受け、改めて修正し再投稿しているものになります。
黒字倒産とは
黒字倒産とは、損益計算書上は当期純利益がでている(いわゆる黒字)であるにもかかわらず何故だか倒産してしまう不思議な現象を言います。
会社は、赤字であっても資金繰りがつけば倒産しませんが、黒字であっても資金繰りがつかなくなれば倒産してしまいます。したがって黒字であっても会社は倒産しうるのです。したがって、会社が倒産しないかどうかというその会社の安全性を判断するには、その会社の支払能力であったり資金繰りの状況をみればよいことになります。
資金さえ十分であれば例え多少業績が悪かったとしてもとりあえず倒産することはないと考えることができるからです。そこで短期的な支払いを行いうるのに十分な資金があるかどうかがの判断は、ざっくりとした分析としては、貸借対照表の流動資産の合計と流動負債の合計を見ます。
短期的支払能力の判断は流動比率が便利
貸借対照表の流動資産とは一年以内に現金化される資産を意味し、反対に流動負債とは一年以内に支払期限が到来する負債を意味します。したがって、一年以内に入金されるものの合計が一年以内に支払期限が到来する負債を上回っていれば、短期的には支払能力があると判断できます。これが流動比率です。
会社の短期的な支払能力を判断する際には流動比率という財務分析指標を使うのが一般的です。この方法はとても優れており、慣れてしまうと誰でも3秒くらいで判断できます。
理想的な流動比率の水準
流動比率をみればその企業が安全かどうか(倒産の危険度)が分かるというのは前述のとおりですが、では、流動比率がどの水準だと安全だと判断できるのでしょうか。
通常企業は、急な支払いに備えるため現金や預金といった支払手段(運転資本)を余裕をもって少し多めに保有しています。したがって通常流動比率は120%~140%くらいになるのが一般的な会社の平均的な数値です。したがってそれより少し多め、150%くらいが理想であるといわれています。
しかし、業界によっては売掛金の回収期間が長い、または小売業のように現金商売をしていて売掛金の回収期間が極端に短い業界等あるため、一概にこの120~140%というのはあてはまりません。したがって業界によってバラツキがあることは念頭に入れる必要があります。
流動比率のジレンマ
ここまでのところを念頭に入れて流動比率を見れば、その会社の安全性について一定の判断ができますが、流動比率は万能ではなく次のような問題もあります。
- 流動比率には棚卸資産や前払費用といった換金性のない資産も支払原資として含めている
- そもそも貸借対照表の数字は決算日時点の情報(ストック情報)であり、実際にそれが入金又は出金となるタイミングまで考慮していない
以上のことから、企業の短期的な安全性を判断する際に流動比率は非常に有用で便利ではあるものの万能ではないということを念頭に入れた上で他の指標も参考にして総合的に判断するべきだと思います。
そこで、流動比率の欠点を考慮して補うものとしてよく使われるのが当座比率です。
長期的な安全性
これまで流動比率を使った短期的な安全性を判断する方法を解説してきましたが、次に長期的な安全性を判断する方法について解説してみます。
企業の長期的な安全性を判断する上で重要なのは、資本の安定度です。
自己資本は多ければ多いほど安全性が高い
分かりやすい説明としては、貸借対照表の貸方(右側)のうち、自己資本は返済義務がありませんが、自己資本以外の借入金などはいずれ返済しなければならない他人資本です。したがって返済義務のない自己資本が多ければ多いほど、その会社は返済義務のない資本を元手に事業を行っていることになるため必然的に資金繰りが安定します。
過年度の内部留保も自己資本
またそもそも自己資本というものは、上述のように株主からの拠出資本と、さらにその会社が過去に稼ぎ出した利益の内部留保とで構成されています。したがって自己資本が多いということは、すなわち過去の利益の蓄積が多いということも意味します。
過去の利益の蓄積が多いということは、経営者の経営手腕が高い、堅実な経営を長期に渡って行っている、または無謀な投資を行っていないとことが予想されるため、数字以上にその会社の総合的な健全度をも示しているともいえます。
この総資本に占める自己資本の割合を自己資本比率といいます。自己資本比率は業種等により適正値はかわってきますが、一般的な平均は20~30%程度で、理想は40~50%といわれています。