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ROE(自己資本利益率)の分母は自己資本か純資産か?計算式の違いとDuPont分析(デュポン分解)による深掘り

2023年8月6日

ROE(自己資本利益率)の分母を自己資本と純資産のどちらにすべきかを世界基準(CFA/CFI)で厳密解説。新株予約権や非支配株主持分を除く理由、海外投資家が必須とするDuPont分析(3段階・5段階分解)による収益力診断まで網羅。

ナビ

ナビ
博士、ROEを計算するとき、分母に「純資産」を使うテキストと「自己資本」を使うテキストがあります。この2つは同じものなのでしょうか?
フィン博士

フィン博士
非常によくある、そしてプロにとっては致命的な違いをもたらす論点だね、ナビ。結論から言うと、厳密には『自己資本』を使うのが世界共通の正解だよ。純資産の中には『子会社の少数株主のもの』や『新株予約権』が含まれている。分子の当期純利益(親会社株主のもの)と対応させるには、それらを除外した純粋な自己資本で揃えなければならないんだ。

この記事のポイント

  • ROE(自己資本利益率)の厳密な分母は「自己資本(親会社株主に帰属する持分)」であり、純資産全体ではない。
  • 自己資本 = 純資産 - 新株予約権 - 非支配株主持分(少数株主持分)。
  • 分子の「親会社株主に帰属する当期純利益」と、分母の「親会社株主の出資持分」を完全に整合させるため。
  • 海外投資家はROEを単一の数値で見ず、DuPont分析(売上高利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ)に分解して、収益力の「質」を解読する。

ROEの分母論争:なぜ「純資産」ではなく「自己資本」なのか?

ROE(Return on Equity:自己資本利益率)は、株式投資家が最も注目する収益性指標の1つです。しかし、日本の入門書やWebサイトでは、分母に安易に「純資産」を使っている事例が多く見受けられます。

結論から言うと、グローバル基準(CFA協会、CFI、欧米機関投資家)および日本の公認会計士協会実務において、分母に純資産を使うことは「不正確(誤り)」とされます。なぜ自己資本を使わなければならないのでしょうか?

純資産と自己資本の決定的な違い(控除すべき2つの項目)

2006年の会社法施行により、従来の「資本の部」が「純資産の部」へと再編されました。現在の純資産の部には、主に以下の4つの要素が含まれています。

  1. 株主資本:資本金、資本剰余金、利益剰余金など(株主が出資・蓄積した純粋な持分)
  2. その他の包括利益累計額:その他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定など(評価損益)
  3. 新株予約権:ストックオプション等(まだ株式になっていない権利)
  4. 非支配株主持分(旧・少数株主持分):連結子会社に存在する、親会社以外の外部株主の持分

★ 自己資本の厳密な定義式:

自己資本 = 純資産合計 - 新株予約権 - 非支配株主持分

(※株主資本 + その他の包括利益累計額 と同義)

分子に用いる「親会社株主に帰属する当期純利益」は、子会社の少数株主の取り分を差し引いた後の利益です。したがって、「分子が親会社株主のものなら、分母も親会社株主の出資持分(自己資本)に揃える」のが財務分析の鉄則(Matching Principle)なのです。

世界基準のROE診断術「DuPont分析(デュポン分解)」

海外の機関投資家は、ROEが単に「15%」と高いだけで飛びつくことは決してありません。なぜなら、「借金を過大に増やせば(自己資本比率を下げれば)、本業の稼ぐ力が変わらなくてもROEは見かけ上いくらでも跳ね上がる」からです。

この見かけの化粧を見破るために開発されたのが、米国デュポン社発祥の「DuPont分析(デュポンシステム)」です。

★ DuPont 3段階分解式

ROE = (当期純利益 ÷ 売上高) × (売上高 ÷ 総資産) × (総資産 ÷ 自己資本)

ROE = 売上高純利益率(収益性) × 総資産回転率(効率性) × 財務レバレッジ(負債活用度)

この分解を行うことで、その会社のROEの高さが「①高付加価値な製品を売っているから(高利益率)」なのか、「②資産を無駄なく超高速で回しているから(高回転率)」なのか、それとも「③単に借金でレバレッジをかけているだけなのか(高レバレッジ)」が瞬時に判明します。

自社株買いによる「ROEドーピング」を見抜く

近年、多くの日本企業がROEを高めるために「自社株買い(Share Repurchases)」を積極的に行っています。

自社株買いを行うと、手元の現金を使って市場から自社の株式を買い取るため、B/Sの「自己資本(純資産)」が直接減少します。分母が小さくなるため、当期純利益が変わらなくてもROEは機械的に上昇します。
株主還元としては歓迎すべき施策ですが、本業の稼ぐ力(マージンや回転率)が改善しているわけではない点には注意が必要です。

まとめ:正確な分母とデュポン分解で本質を見極めよう

ROEを分析する際は、まず分母が「非支配株主持分を除外した純粋な自己資本」になっているかを確認し、さらにデュポン分解によって「なぜそのROEが達成されているのか」を因数分解する習慣を持ちましょう。それができるだけで、あなたの財務分析力はプロのアナリストレベルへと引き上がります。

中の人

勤務税理士。税法はもとより資金繰り、財務関係も詳しいです。休日に植物いじるのが趣味。あと猫好き。

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