収益性分析

総資産利益率(ROA)の分母と分子

2023年8月6日

分母の総資産のアレンジ

総資産利益率(ROA)の基本算式は次のとおりですが、少しアレンジして分母と分子にひと手間加えた金額を使用する方法もありますのでご紹介します。

分母に加重平均した金額を使用

総資産利益率の算式の分母の総資産には期末貸借対照表の総資産の金額を使う方法が一般的ですが、期首貸借対照表の総資産と期末貸借対照表の総資産の金額を足して2で割って加重平均した金額を使う方法もあります。東証が公表している決算短信の集計レポートでは加重平均した金額が使用されてます。

期首貸借対照表の総資産を使用

逆に、期首貸借対照表の総資産を使う方法もあります。根拠としては期末貸借対照表の総資産当期純利益を含んだ金額であるためです。理論的にはこの方式が一番正確だと思います。ただし少しややこしくなるため何も考えず期末貸借対照表の総資を使うのが一般的です。

分子の当期純利益のアレンジ

税引前当期純利益を使う考え方

総資産利益率は算式の分子は基本算式のように当期純利益を使うのが一般的です。ちなみに当期純利益とは税引後の当期純利益です。当期純利益を使う方法が一般的な理由としては、企業の事業活動は法人税等の社会的コストを差し引いた後の当期純利益の最大化を目的としているため事業活動の効率性・収益性の判断も税引後ベースで行うべきだという考え方に基づきます。

しかし逆に、総資産利益率の分子には税引前当期純利益(さらに支払利息も加算)を使う考え方もあります。の考え方の根拠としては、支払利息と法人税等を差し引く前の利益を使ったほうが総資産利益率と借入金利との比較で財務レバレッジの有効度を判断しやすいためです。

具体的には次のとおりです。

総資産利益率>借入金利

支払利息と法人税等を差し引き前の利益を使って計算した総資産利益率が借入金利以上である場合、その会社は借入金利以上に利益を獲得できていることを意味します。したがって財務レバレッジ効果があると言えます。この場合には事業の効率性だけを考慮するならばさらに借入金を増やして事業を拡大すべきと判断できます。

総資産利益<借入金利

支払利息と法人税等を差し引き前の利益を使って計算した総資産利益が借入金利より低い場合は、その会社の事業の収益性が借入金利より乏しいことを意味します。そして理論上は事業から撤退して借入金を返済したほうが効率的と判断できます。

経常利益を使う考え方

総資産利益率の算式の分子に経常利益を使う考え方もあります。この場合総資産利益率ではなく総資産経常利益率として別のものとして扱われたりもします。

当期純利益には特別損益項目が含まれていることから純粋な意味で当期の期間損益ではないですが経常利益は純粋な意味での当期の期間損益であるため純粋な収益力の判断が可能になるというのがこの根拠です。

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