決算書にはルールがある
決算書には聞きなれない名称やたくさんの数字が並んでいます。したがって会計学を学んだことがない一般のサラリーマン、学生等には一見しただけでは理解することは非常に困難である印象があるはずです。
しかし、決算書はどんな会社であっても貸借対照表と損益計算書(上場会社等の場合にはキャッシュフロー計算書も)によって構成されています。さらにこれらの計算表は企業会計原則や企業会計基準といった一定のルール(会計ルール)に基づいて作成されています。
決算書を読むための大前提
したがって、決算書を読むためにはまず、決算書を構成するこの貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書といった財務諸表に関する基本的な理解が必要不可欠です。これらの理解なしに決算書を読もうとするのは、英単語が分からないのに英語の文章を読もうとするくらいナンセンスなことだと思います。
財務分析を行うための大前提
それに対して、決算書のルールが分からなくても、会社の決算書の数値を財務分析指標に当てはめて算出された財務分析結果だけを単純比較するだけでも、会社の安全性、収益性などを評価することができてしまいます。
みなさんご存じの通り、複式簿記の仕組みもすごいと思いますが、財務分析指標というのもすごいなと思います。
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財務分析の意義、財務分析を行うメリット、内部分析と外部分析の違い等について解説
財務分析とは 財務分析(読み方:ざいむぶんせき)とは、会社の貸借対照表や損益計算書といった財務諸表の数値を財務分析指標にあてはめることでその会社の安全性や収益性を分析し、その会社の企業価値を評価するこ ...
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決算書をより深く理解するために財務分析を活用する
なお、財務分析を行うことで特定の会社の安全性を収益性を評価することは可能になりますが、より深く特定の会社の決算書を理解するためにはやはり会計ルールを学ぶべきだと思います。
例えば、一般的な財務分析の教科書的には流動比率は高ければ高いほどその会社の安全性が高いとされますが、過剰在庫によって流動比率は高く算出されてしまいます。したがって流動比率は高すぎても問題です。これを私は流動比率のジレンマ(「流動性のジレンマ」とは無関係)と呼んでいます。
こういったジレンマも会計ルールを多少知ってさえいれば回避可能です。
決算書を読むための会計ルールの学び方
では、決算書を読むための会計ルールを学ぶにはどうしたらよいか。
簿記3級を受験するのはやめましょう
決算書を読むことが目的の人が簿記を勉強したり簿記3級を受験するのはやめましょう。簿記とは帳簿記入のルールであり、決算書を読むためには不必要な知識です。ただし、資産、負債、資本、収益、費用という五つの要素については正しく理解する必要がありますがそれは簿記を学習しなくても理解可能です。
会計の入門書を読むのはおすすめ
決算書を読むためのルールを学ぶには、貸借対照表や損益計算書の基本的仕組みについて学ぶ必要があります。さらに会計方針によって決算書の数字は大きく変わることから、できれば会計学の基礎的な知識も学んでおくべきです。個人的には会計の入門書を読むことがおすすめです。一冊ではなく何冊も。
なぜ一冊ではなく何冊も読むべきなのかといいますと、基本的に入門書であればどの本にも書いてある情報は同じでただ切り口が違うのみとなります。同じ内容であっても繰り返し学習することで記憶の定着が良くなりますし、異なった切り口から学ぶことでより深い内容を理解することが可能です。
会計学を学ぼう+を読むのもおすすめ
しかし入門書といえど本を読むのは時間的な理由だったり金銭的な理由で少しハードルが高いという方も中にはいらっしゃると思います。そんな方には当ブログがおすすめです。完全無料でなおかつ、会計学だけでなく、資金繰りなどの財務や税務についても豊富な知識がある著者が直接執筆しているためかなり深い内容まで学ぶことが可能です。
疑問に感じた場合にはコメントして質問することも可能です。
中小企業でも有効な財務分析指標
最後に補足として、中小企業の場合、ほとんどの会社の社長は売上高と当期純利益、あとは粗利率くらいしか関心がない人が多いです。中小企業であれば実際それで問題ないでしょう。株式公開しておらず、会社の株主は創業者一族が所有しているような中小企業がROAとかROEとか気にしてもしょうがないからです。
しかし、現預金月商比率や固定長期適合率といった資金繰りに直結するような指標は是非とも決算期ごとで構いませんので注視しておくべきです。
ちなみに、税理士事務所の職員はもちろんのこと、かなり経験豊富な税理士であっても資金繰りについてはかなり疎いという方はとても多いです。財務は税理士の専門分野ではないからです。したがって適切なアドバイスをしてもらえていないパターンも非常に多いです。