未収入金とは
貸借対照表の流動資産の区分に表示される未回収の債権を意味してそうな勘定科目には売掛金や未収入金、未収収益があります。
このうち、未収収益だけは完全な別物となりますが、未収入金は売掛金とはかなり性質が近いです。英語表記する場合にはどちらもAccounts receivableとなり、両者は明確には区別されないようです。しかし、我が国の会計学上は売掛金と未収入金は明確に区別されます。
それでは未収入金とはいったい何なのか。売掛金や未収収益との相違点やキャッシュフロー計算書との関連についても詳しく解説してみたいと思います。
未収入金と売掛金の相違点
未収入金とは、固定資産や有価証券などを売却したがいまだ代金が支払われていない場合における、その代金の未収入金です。
売掛金も同じく代金の未収入金ですが、売掛金は取引先との営業取引により生じた代金の未回収高を処理する勘定科目であるのに対し、未収入金とは営業取引以外の取引により生じた代金の未回収高を処理する勘定科目であるという点で異なります。
未収入金と売掛金との相違点は簿記上重要な論点となるため簿記の問題では頻出します。
ちなみに売掛金と未収入金を日本の会計基準においては厳密に区別しなければならないこととなっている根拠は企業会計原則です。
貸借対照表原則四、貸借対照表の分類
受取手形、売掛金その他流動資産に属する債権は、取引先との通常の商取引上の債権とその他の債権とに区別して表示しなければならない。
未収入金は実際にはほとんど出てこない
未収入金は簿記の問題では頻出しますが、現実の会社においては通常まず出てきません。
冷静に考えてみてください。売掛金のように信頼関係のある得意先であれば掛け販売することは利便性を考えてもあり得ますが、見ず知らずの他人相手に自動車を販売するとして、その代金の支払いは来月末でいいよなどの口約束ってあり得ると思いますか?自動車ではなく有価証券でもなんでもそうですがまず100%あり得ないです。
役員に貸付金を貸し付けている場合に、契約書は取り交わしていても利息を受け取り漏れているというケースはよくあります。その場合には次のような仕訳を行いますが、こういったケース以外を除き、通常未収入金はほとんど発生しないです。
(借方)未収入金 ×× (貸方)受取利息 ××
こういったケースでも未収入金はかなり少額です。そもそも営業取引以外で生じるものであり、貸借対照表に表示する際にもその他資産などとしてまとめられていることも多くそのほうが合理的なレベルです。つまり売掛金と未収入金を丁寧に区別することは実はあまり意味がない場合が多いのかもしれません。
巨額な未収入金を計上している上場会社
しかし、上場会社の有価証券報告書を見ていると貸借対照表に「未収入金」がかなり巨額で計上されていることがあります。そういった場合はおそらくですが、子会社や関連会社との間で株式や不動産の売買があり、その際の未収入金が残っているものと思われます。
また、関連会社や子会社に対して資金を貸し付ける場合には利息を取る必要がありますが、不動産か有価証券を購入して代金を未収入金としておけば、会計上は利息を取る必要がないというメリットがあります。
法人税法上、課税当局に無償による資産の貸付であるから益金算入すべきだと指摘される可能性はありますが。
未収入金とキャッシュフローとの関連
(借方)未収入金 ××(貸方)貸付利息 ××
貸付利息を計上した時点で収益が発生して同額の当期純利益が増加します。しかし、対価して未収入金という債権を取得しましたがいまだ現金化に至っていないためキャッシュは増加していません。したがって未収入金増加分だけ営業キャッシュフローのマイナスとなります。
(借方)現金 ××(貸方)未収入金 ××
未収入金を実際に現金化できた段階で営業キャッシュフローのプラスとなります。