財務会計

財務諸表に関するかなりめんどくさい話をまとめてみた!

2023年8月4日

財務諸表とは本来法律用語

財務諸表(読み方:ざいむしょひょう)とは、本来は法律用語です。

昭和38年に公布された「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」という法律において「財務諸表」という言葉が初めて使われたのが「財務諸表」の始まりです。

財務諸表とは四つの表(4表)のことをいう

そして「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の第1条においてに「財務諸表」ついて次のように定義されています。内容は少し省略しております。

金融商品取引法の規定により提出される財務計算に関する書類(以下「財務書類」という。)のうち、次の各号に掲げるものの用語、様式及び作成方法は、当該各号に定める規定の定めるところによるものとし、この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。

一 財務諸表貸借対照表損益計算書株主資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書並びに附属明細表(これらの財務書類に相当するものであつて、指定法人の作成するもの及び第二条の二に規定する特定信託財産について作成するものを含む。以下同じ。)

すなわち、「財務諸表」とは次の4つ並びに附属明細表を指すことになります。

「並びに」は並列を意味する

なお、ここで初見であるにも気づいた方がいらっしゃいましたらあなたは相当頭が切れるタイプだと思いますが、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の第1条をよく読むと、財務諸表とは上記4つ並びに附属明細表と規定されています。

そして「並びに」とは、並列を意味する言葉であるため、この規定の文理解釈としては財務諸表とは、上記4つに附属明細表を含めた5つとすべきとなります。

附属明細表は4表を補完するもの

しかし、附属明細表とは、あくまで貸借対照表などに書かれている情報を詳細に補足するものであり、それ自体単独に意味を持つものではないため、当サイトの解釈としましては財務諸表には含めません。

したがって財務諸表とは、上記の4表ということで解説しております。

附属明細表、個別注記表も財務諸表に含まれる

なお、規定を厳密に文理解釈しますと、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書の4表だけでなく、附属明細表や個別注記表なども「財務諸表」に含まれます。

根拠としては、上でご紹介した「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条のカッコ書き部分で、これらの財務書類に相当するものであつて、指定法人の作成するもの及び第二条の二に規定する特定信託財産について作成するものを含む。と記載されているからです。

ただし、財務諸表の範囲には含まれるものの、上で解説したとおり、附属明細表や個別注記表などについては、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書の内容に関する補足的な情報補足的に公開しているだけなので、あくまで補助的な位置づけとなります。

「Financial statements」をそのまま日本語に直訳

ちなみにどうでもいいことですが、この「財務諸表」という名称はおそらくですが、英語の「Financial statements」そのまま日本語に直訳したものだと思われます。

財務諸表の範囲には諸説ある(結論)

以上より、財務諸表とは、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書株主資本等変動計算書という4つを指す、と当ブログではご紹介しています。

ただし、人によっては附属明細書や個別注記表なども財務諸表の範囲に含めるべきだ等々、色々と考え方があると思います。厳密な意味においては附属明細表なども財務諸表の範囲に含まれますし、そもそも準拠するディスクロージャー制度によって財務諸表として公開が義務付けられている範囲は異なりますし、財務諸表の範囲に関しては諸説あると思ってください。これが結論です。

なお、最初にご紹介した「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」という法律において「財務諸表」について法律上定義が定められているとはいっても、法律というものはその法律が実際に適用される場面以外では法律に従わなければいけないといった義務はありません。すなわち、金融商品取引法の規制を受ける場合以外です。

これら諸々の事情を考慮した上で、財務諸表として格段に重要なの表が次の4つだということです。

財務諸表と決算書は同義の会計用語

また、日本において財務諸表という単語は決算書と同義の会計用語として扱われています。

ちなみに決算書とはざっくり説明すると会社が決算期ごとに作成する経理に関する報告書のことです。財務諸表もざっくり説明すると同じです。

財務諸表と決算書は厳密には別のもの

ただし、財務諸表と決算書は厳密には少し異なると考えている人が多いはずです。

理由としては、本来、決算書とは会社法の規定により作成される計算書類のことを指し、同様に財務諸表とは、金融商品取引法の規定に作成される外部公表される有価証券報告書などのうちの貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書部分を指すためです。

決算報告書が決算書になった

なお、これは個人的な主観に過ぎずどこかにソースがあるわけではないですが、決算報告書を短縮したのが決算書だと思います。ちなみに決算報告書とは、会社法の規定により作成される計算書類を紙にプリントした際に表示されるタイトルです。こういうものです。

財務諸表(決算書)の読み方

財務諸表の読み方については別ページにまとめました。

財務諸表の読み方についてはコチラ

財務三表とは

最後に、日本においては財務諸表のうち、貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書の3表を財務三表と呼ぶ謎の風潮があります。

ちなみにこれはもともととある有名な書籍の著者である経営コンサルさんが書いたことで広まった造語です。

[wpap service="with" type="detail" id="4022736844" title="【増補改訂】 財務3表一体理解法 (朝日新書)"]

専門用語でも会計用語でもないため、会計の専門家や経理の専門家でこれを使う人は皆無ですが、素人さんに財務諸表について説明する際には大変都合がいいので好まれて使われている気がします。

あとは、財務諸表という用語の意義に関するめんどくさい話について深掘りして今回まとめてみましたが、財務諸表という用語の意味・範囲については色々ありすぎて人によって解釈も違いますし、不便な場面が多いので財務三表と言っておいたほうが都合がいいという側面もありそうです。

貸借対照表と損益計算書はつながってない!

しかしですね、貸借対照表と損益計算書はあくまでも株主資本等変動計算書を介して繋がっているのであり、現行制度会計における貸借対照表と損益計算書は実はつながっていません。繰り返しますと、財務三表という造語の解説において、貸借対照表と損益計算書は当期純利益を通じて繋がっていると誤解を与えるような解説がなされていますがこれは大きな間違いです。

平成17年6月29日に成立、同年7月26日に公布された会社法が施行された平成18年5月1日より前であれば、実は貸借対照表と損益計算書は当期未処分利益をいう項目を通じてつながっていました。したがって、過去の感覚を引きずっている古い方は貸借対照表と損益計算書は当期純利益を通じて繋がっていると勘違いしてしまうのかもしれないと、ちょっとあぶないなと感じました。

中の人

事業会社の財務担当者として勤務していたことがある異色の経歴の勤務税理士。休日に植物いじるのが趣味。あと猫好き。早く独立して氏名公開したい。

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