自己資本比率とは
- 自己資本比率は、総資本に占める純資産の多さを示した指標。
- 過年度の留保利益は純資産を構成する。
- したがって自己資本比率が高いほど財務的に健全な優良企業。
- 自己資本比率はShareholder Equity Ratioと英語表記される。
- 日本の会計基準でShareholder Equityに相当するのは純資産の部。
- 自己資本比率の算式は純資産/総資本である。
自己資本比率の分子の純資産
自己資本比率の分子の純資産とは貸借対照表のこの部分になります。
自己資本比率は株主資本比率と表記すべき?
会計基準の改正により貸借対照表の「自己資本」は「株主資本」へと名称が改められました。
したがって、「自己資本比率」ではなく「株主資本比率」と財務分析指標の名称も変更するべきなのでは?と感じる方がもしかしたらいるかもしれませんが、個人的な意見としては、これまでどおり自己資本比率で問題ないと思います。むしろ正確に表記するのであれば「純資産比率」と表記すべきだと思うからです。
理由としては次のとおりです。
- 英語のShareholder Equityは日本語に直訳すると株主資本となりますが日本の会計基準では純資産に相当する用語であること。
- 英語のShareholder Equityは日本の会計基準における株主資本とは異なること。
- 株主が一人の会社や同族会社の場合には自己資本=純資産となるため自己資本という表記もあながち間違いではない。
自己資本比率が高いことによるメリット
自己資本比率が高いことには色々なメリットがあります。まとめると次のとおりです。
借金に依存していないため資本が安定
平時であればそこまでメリットを感じることはないですが、借金に依存していない分、緊急時であっても経営が安定するメリットがあります。
資金繰りに余裕
借入金が少ない分、毎月の借入金返済額が少ないため資金繰りに余裕がでます。
経常利益、当期純利益、ROEが高くなる
借入金が少ないということは借入利息も少ないです。借入利息が少ないということは経常利益が高くなります。したがって当期純利益も高くなります。それに連動して自己資本利益率(ROE)も高くなります。
借入金利息なんてせいぜい借入額の数パーセントじゃないかと思うかもしれませんが、東京一部上場企業の総資産利益率(ROA)は10%台あるとかなり優秀、20%台あるのはトップクラスのみとなりますので借入額の数パーセントといえども借入金利息の企業利益に与える影響は結構大きいです。
自己資本比率が高いことによるデメリット
会社の安全性という側面だけで考えると自己資本比率は高いほど安全と言えます。しかしデメリットもあります。
株主資本は資本調達コストが高い
負債による資本調達に比べ資本による資本調達は資本コストが高くなります。投資家である株主が要求する配当金の水準は価格変動リスクがある分、借入金利息よりずっと高いからです。
配当性向のページでも書きましたが、日本企業の場合だいたい当期純利益の30%を目安として配当金として株主に還元する会社が多いです。したがってあえて自己資本比率を下げるために企業買収を行うといったことも実際に行われています。
評価換算差額や新株予約権などの取り扱い
自己資本比率の計算に際しては評価換算差額や新株予約権などを分子の純資産から除外しません。
理由としては、評価換算差額等のような項目は単なる差額概念であって資本ではないですがその部分も結局は株主に帰属するため、それも含めて自己資本比率を計算して問題ないからです。
ただし少数株主持分は除外するなどいろいろな考え方があります。詳細は別のページにまとめました。
自己資本比率が高い=内部留保が多い優良会社
自己資本は株主からの拠出である拠出資本と過去の利益の内部留保である留保利益とその他差額で構成されています。
したがって純資産が多いということは株主からの拠出資本が多いというよりは当期純利益のうち配当金としないで内部留保したものの蓄積が多いということを示している場合が多いです。
つまり自己資本比率が高いということは、その会社には競争力があったり、経営者の経営手腕がとてもよい、さらに前述のように財務基盤が安定している等々、いろいろな意味でのその会社の健全性を示しています。その結果が利益の内部留保につながっていると考えます。
サンプル問題
それでは実際に自己資本比率を計算してみましょう。
答え合わせ
1230/3430*100=35.86%