発生主義会計と現金主義会計
企業は営利を目的として設立された経済主体であり、その経済活動の結果獲得された利益を計算する損益計算は企業会計の中心的な命題となっています。そして今日の企業会計において損益計算は人為的に区切られた期間ごとに行う期間損益計算が採用されています。
その期間損益計算においてどのタイミングで収益と費用を認識するのかという考え方の違いにより発生主義会計と現金主義会計があります。
- 発生主義会計
- 現金主義会計
発生主義会計と現金主義会計は企業の業績尺度となるような利益を算定することを目指すのか、それとも客観的な利益を算定することを目指すのかという目的の違いによりどのようなプロセスをとるのかの違いと言い換えることもできます。
ちなみに現行制度会計においては発生主義会計が採用されています。
発生主義会計
発生主義会計とは、費用・収益の認識を現金収支という事実にとらわれることなく合理的な期間帰属を通じて期間業績を反映させる損益計算の方式です。
メリット
発生主義会計を採用した場合には適正な期間業績の把握が可能となります。
デメリット
発生主義会計は必ずしも貨幣性資産の裏付けのある収益だけを認識するわけではないため、純粋に発生主義会計により期間損益計算を行う場合には利益の処分可能性について問題がある場合があります。
また、会計計算の恣意的な操作可能性という問題もあります。
現金主義会計
現金主義会計とは、費用・収益の認識を現金の収支という事実に基づいて認識する損益計算の方式です。
メリット
現金主義会計は収益を現金収入時において、費用を現金支出時においてそれぞれ認識するため、客観性の高い期間損益計算を行うことが可能です。
デメリット
現金主義会計は、棚卸資産の期末在庫や機械、建物といった固定設備が全く存在せず、かつ、信用取引が全く行われていない場合でなければ適正な期間損益計算を行うことができません。
そのため現金主義会計は、棚卸資産の期末在庫や機械設備が存在しないか、もしくは存在していたとしても重要性が低く、かつ取引のほとんどが現金で決済される企業でなければ制度会計上その採用は認められていません。