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目次
  1. 自己資本比率とは
  2. 自己資本比率の図解
  3. 自己資本比率の意味
    1. 自己資本比率が高いことによるメリット
    2. 自己資本比率が高いことによるデメリット
  4. 自己資本比率の計算と純資産
    1. 純資産から新株予約権を除外する考え方
    2. 純資産から少数株主持分を除外する考え方
  5. 自己資本は資本コストが高い
  6. 過年度利益の内部留保も純資産を構成

自己資本比率とは

自己資本比率とは、総資本に占める純資産の割合を示す指標です。安全性分析の指標です。

自己資本比率の算式は次のとおりです。

自己資本比率


自己資本比率の図解

自己資本比率を図解すると次のとおりです。

自己資本比率

総資本(流動負債+固定負債+純資産)に占める純資産の割合が自己資本比率となります。


自己資本比率の意味

自己資本比率とは、会社が調達した総資本のうち、返済義務のない資本の割合となります。

通常自己資本比率は50%〜30%くらいになるのが一般的(業種により大きく異なります。)ですが、割合が高いほど返済義務のない資本を元手にして事業を行っていることを意味します。


自己資本比率が高いことによるメリット

したがって自己資本比率が高いほど借入金が少ないことを意味しますので、毎月の借入金返済額が少ないため資金繰りに余裕がでます。そして借入金利息が少ない分だけ支払利息が少ないため経常利益が高くなります。それに連動して総資産利益率も高くなります。

なお、借入金利息なんてせいぜい借入額の数パーセントじゃないかと思うかもしれませんが、東京一部上場企業の総資産利益率を見ると10%台あるとかなり優秀、20%台あるのはトップクラスのみとなりますので数パーセントといえども借入金利息は結構大きいです。


自己資本比率が高いことによるデメリット

会社の安全性という側面だけで考えると自己資本比率は高いほど安全と言えます。

しかし負債による資本調達に比べ資本による資本調達は資本コストが高くなります。投資家である株主が要求する配当金の水準は借入金利息よりずっと高いからです。したがってあえて自己資本比率を下げるために企業買収を行うといったことも実際に行われています。


自己資本比率の計算と純資産

自己資本比率の基本算式は冒頭に書いたとおり次のようになりますが、



算式の分子は純資産を使うのが一般的です。

ちなみに純資産は下の図解のようには株主資本+評価換算差額等+新株予約権+少数株主持分により構成されています。

純資産の構成


純資産から新株予約権を除外する考え方

自己資本比率の計算に際し純資産から新株予約権を除外する考え方があります。理由としては新株予約権は権利行使されるまでは資本ではないというものや、権利行使されなかった場合には利益に振り替えられるといったことが挙げられます。

ちなみに財務省が公表している法人企業統計調査においては自己資本比率の計算にあたり新株予約権が除外されています。

自己資本比率と新株予約権


純資産から少数株主持分を除外する考え方

次に自己資本比率の計算に際し純資産から少数株主持分を除外する考え方があります。理由としては少数株主持分は自己資本ではないからというところを厳密に捉えているものと思います。金融庁はこの方式を推しているようです。


小宮一慶さん

有名著者の小宮一慶さんは著書『財務諸表を読む技術わかる技術』において自己資本比率から少数株主持分を除外する考え方もあるが返済義務がないことにかわりはないため除外する必要はないのではないかと述べられています。

当サイトも同様の意見です。


自己資本は資本コストは高い

銀行借入には利息を支払う必要があります。同様に株主資本に対しては配当金を支払う必要があります。ただし取扱が少し異なります。まとめると次のとおりです。


他人資本 銀行借入等 返済義務あり 支払い利息を支払う 業績に関わらず支払う 費用になる
自己資本 株主からの出資 返済義務なし 配当金を支払う 業績が良い場合のみ支払う 利益処分

株主からの資本調達である自己資本は業績が好調な場合には配当金を支払う必要があります。ただし業績が不調な場合には配当の支払いを見送ることもできます。したがって安全弁としての機能があると言われます。

ない自己資本は業績が不調なときには配当の支払いを見送ることができる以上、業績が好調なときには沢山の配当金を支払わないと株主は納得しません。つまり株主からの出資による資本調達は元本返済義務こそないものの銀行借入より資本コストは高いです。

株主資本コスト、株主期待収益率については『ざっくり分かるファイナンス』に分かりやすく解説されているため興味のある方はぜひお読みください。


過年度利益の内部留保も自己資本を構成

自己資本は株主からの拠出である拠出資本と、企業が事業活動から稼ぎ出して内部に蓄えている利益の内部留保とで構成されていますが、自己資本が多いということは過去の利益の蓄積が多いということも同時に示している場合が多いです。

したがって、自己資本比率が高いということは、その会社の競争力であったり、経営者の経営手腕、さらに前述のように財務基盤が安定している等々、いろいろな意味でのその会社の健全性を示しています。


自己資本比率の統計データ(業種別平均)

経済産業省発表の平成26年企業活動基本調査速報(平成25年度実績)による業種別の自己資本比率の平均は次のとおりです。

自己資本比率の統計データ(業種別平均)

さらに詳細な統計データはこちら



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