
現預金月商比率とは
現預金月商比率とは、会社が月商の何ヶ月分の現預金を保有しているかを示す指標です。手元流動性比率とも呼ばれます。安全性分析の指標です。
現預金月商比率の基本算式は次のとおりです。

現預金月商比率は安全性を判断する上で最も重要
現預金月商比率は会社の安全性(倒産を回避できるかどうか)を判断する上で最も重要な指標です。
なぜなら会社は資金が足りなくなると倒産するからです。
流動比率が大幅にマイナスであっても自己資本比率が10%くらいしかなくても資金不足に陥って支払い不能にならない限り会社は倒産しませんが流動比率が大幅にプラスであっても自己資本比率が50%を超えるくらい十分にあってもちょっとしたはずみで資金不足に陥って支払い不能になると会社は倒産します。
つまり手元に現預金を沢山持っていれば持っているほど倒産危険性は下がるのですがどれくらい持っていたら安全なのかという目安とされるのが現預金月商比率です。月商の何か月分かで考えます。
現預金月商比率の目安
現預金月商比率は通常の中小企業であれば1月分~1.5月分、資本力の高い大企業であれば少し少な目で1月分が目安と一般的に言われています。
経済環境の変化に応じて安全水準は変わる
現預金月商比率の目安としては前述のとおりですが、これはあくまで目安に過ぎません。
金融危機に陥った場合などなんらかの事件事故が発生した場合にはこれでは全然少ない場合も多いと思います。つまり経済環境等の変化に応じて現預金月商比率の安全水準は変化するため外部分析を行う際には考慮するべきですし逆に会社内部の財務部門は資金繰りにあたって経済環境の変化に応じて運転資金を増減させていく必要があるということです。
現預金月商比率3月分は間違いではない
現預金月商比率は10年くらい前までは3月分が安全水準だと一般的に言われていた記憶があります。
しかし近年「現預金月商比率3月分は間違いである」というようなショッキングなことを言ってる人達をよく見かける気がします。確かに、平時を前提とすれば現預金月商比率3月分というのはちょっと多いかなと思います。
また、年利数%で銀行借入により調達した資金を普通預金など利息のつかない預金口座で寝かせておくのは単純に無駄でもあります。したがって「現預金月商比率3月分は間違いである」っていう意見ですが、言いたいことは分かるのですが、会社が倒産しないために現預金月商比率3月分を目安にするのは経営方針として間違っていないです。
銀行はいつでもお金を貸してくれるわけではない
かつて一般企業の財務部門にて銀行から事業資金を調達したりする業務に従事していた経験があるのですが、その経験から言わせていただきますと、銀行はこちらがお金を貸してほしいときにはなかなか貸してくれないです。逆にお金は余ってるから借りたくない時に限って銀行融資を押し付けてこようとします。
したがって貸してくれると言ってるならとりあえず借りておくのが正しいと個人的に強く思います。現預金月商比率3ヶ月分になってしまうからこれ以上要らないではなく貸してくれるなら借りておけばよいのです。
当方は税理士につき税理士事務所での勤務経験もあるのですが、税理士や税理士事務所の職員は税法や経理の知識はあってもこういった財務に関しては疎い方がかなり多いと思います。
すぐ売却して換金できる有価証券は現預金として扱う
決算書の分類に際して会社が所有している株式や社債、投資信託は有価証券となります。しかし現預金月商比率の計算に際しては有価証券のうちすぐ売却して換金できるものは現預金に含めて考えます。
理由としてはすぐ換金できるのであれば現預金と同様に支払い手段になるからです。

決算書からはすぐ換金できる短期投資の金額は分からない
しかし、有価証券報告書などの貸借対照表においては流動か固定かの分類しか行われていないため貸借対照表に記載されている有価証券のうちすぐ換金できる短期投資がいくらなのかは会社外部の人間には分かりません。
したがって流動資産の部に記載されている有価証券全てを短期投資として現預金月商比率を計算する考え方もあるようです。個人的にはだいぶちょっと違うと思いますが。1年以内に売却可能であることとすぐ換金できることとは意味が違うからです。
キャッシュフロー計算書の現金及び現金同等物の期末残高を使用
なお、個人的にはキャッシュフロー計算書が開示されている上場企業であればキャッシュフロー計算書の現金及び現金同等物の期末残高を使用してしまうのもひとつの手かなと思います。
ただしキャッシュフロー計算書の現金同等物の範囲は会社が自由に決められるため(注記は必要)、貸借対照表の現預金と一致している場合もありその場合には無意味です。
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